前歯の真ん中からカウントして、4番、5番目を小臼歯、6番から8番目を大臼歯と呼びます。この中で、最も奥にある8番目の大臼歯のことを「親知らず」といいます。
親知らずが不完全に生えている場合、食渣(しょくさ)が停滞しやすくブラッシングしにくいので、親知らずはもちろんのこと手前の大切な歯(第7大臼歯)まで虫歯になってしまいます。
抜歯が必要な状態の図
親知らずが原因の歯周病があります。親知らずの下に食べかすや細菌が入り、炎症を起こします。そして悪化してしまうと手前の歯を支える骨が溶けてしまいます。
親知らずの周りで起こる炎症を「智歯周囲炎」と言います。これにより歯槽骨が溶け、徐々に減ってしまい歯周病を招く結果となります。
半分埋まっている歯
親知らずは歯並びを悪くしてしまいます。
親知らずが出てくる際に十分な奥行きスペースがなく手前の奥歯が押されてしまい、歯並びが乱れてしまいます。
手前にある歯が押されて移動
親知らずは口腔内の奥にあるので日頃のお手入れをするのが困難な歯です。お手入れ不足で、食べかすが詰まったり、プラーク(細菌)を生成してしまいます。
親知らずが生えてくる時に歯茎がかぶさる事があり、この時に歯茎にプラークが溜まってしまい、膿が出ることが、臭いの原因になる事もあります。 口臭の原因になるプラークは、きちんと除去し、ケアをする事が重要です。
親知らずが噛み合わせに影響を与えるため、頭痛を招きます。
親知らずが生えてくる時に歯茎が炎症を起こして、痛みによって無理に力を入れて噛もうとすると、首や肩に余計な力が入り、首や肩の筋肉が凝ることで頭痛を招きます。
また、頭痛以外に目まいや肩こり、吐き気をもよおす事があります。痛みの再発を予防する為に親知らずを抜歯することもあります。
親知らずを抜歯する前に、親知らずと血管、神経の位置関係を確認するためレントゲン撮影を行います。
難しい抜歯の場合は、必要に応じてCT撮影を行う場合もあります。
検査の上、口の中の細菌が多い場合は、親知らずの抜歯を一旦見送り、抗生物質等による除菌や歯石の除去を先に行う場合もあります。
埋まっている親知らずの抜歯
親知らずの抜歯前に部分麻酔を行います。部分麻酔は、表面麻酔と注射麻酔があります。
親知らずを抜歯する時に敏感な歯茎に麻酔をする為、通常より痛みが出やすいので、注射を打つ前には歯茎の表面に表面麻酔のシールを貼ります。このことで注射の痛みを緩和し、実際の注射を使用した部分麻酔を行います。
麻酔が効いた段階で、図の様に抜歯をします。抜歯を行う為には「歯根膜」という歯と骨の間のクッションのようなものから歯を引きはがす必要があります。
また骨の奥に親知らずが埋もれている場合、骨を少し削ったり、細かく歯を割る必要もあります。
個人差はありますが、麻酔は約2、3時間で効果が切れます。
親知らずの抜歯が終わると、その箇所は穴が開いた状態です。 穴が開いた箇所がかさぶたになり歯茎が盛ることで、治癒します。かさぶたが出来ることは歯茎を治す重要な過程ですので、糸で傷口を縫うことでかさぶたができやすい環境にします。 歯磨きの時には、糸が引っ掛かり取れてしまう事がありますので注意が必要です。また舌で触りすぎることで糸が取れる場合もあります。約2~3日で糸が自然と取れた場合は、出血の有無を確認して、ご心配であれば当院に遠慮なくご相談ください。
糸で縫った後に、さらに止血の処置を行います。
抜歯後は出血するので、なるべく早くかさぶたを作り止血することが大切です。
ガーゼをしっかり噛まなかったり、傷口を指や舌、歯ブラシで触ると、かさぶたが取れる事につながり再び出血する可能性があります。
傷口を刺激する行為を避け、しっかり止血をしましょう。
また激しい運動・熱い風呂に入る・飲酒等も血圧の上昇を招き、かさぶたが外れる事に繋がります。
抜歯後約2~3日はこのような生活習慣をできるだけ控えましょう。
抜歯をした翌日に、状態によっては傷口の確認や消毒の為、再び当院にお越しいただく場合があります。
翌日受診する際は感染の有無や止血の度合いを確認し、消毒を行います。また痛みや腫れの程度を確認し、お薬の変更や追加が行われる場合もあります。
親知らずを抜糸して約1週間で傷口は小さくなるので抜糸します。抜糸はほとんど時間がかかりません。
該当箇所に食べかすが詰まっている場合は、その時にクリーニングを致します。
抜糸が終了すると、抗生物質や痛み止めのお薬を必要に応じて処方致します。
以下は注意事項として、歯茎が完治するには約1か月、骨を削った場合回復に約3~6か月程かかります。万が一、傷口がしっかり治っていない場合は、無理は禁物です。